わたしのたべかた

とるにたらないこととくだらないこと。

モダンスイマーズ「悲しみよ、消えないでくれ」

今年に入ってまた定期的にインプットするようになったからブログにでも書き溜めよう~と開いたら、ずいぶん前に書いたピンクとグレーの感想がでてきた。このタイミングで。おもしろいからそのまま残しておこう。

ということで、観たもの読んだもの触れたものについて好き勝手に書き散らかしていく。手始めに最近みた掲題の舞台から。

 

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句読点三部作と位置づけられた3作品を連続上演中のモダンスイマーズ。

一作目の「嗚呼いま、だからこそ愛」がはじめて観たモダンスイマーズで、グッときてしまったので慌てて戯曲を買って、今回2回目。

別で「嗚呼いま、だからこそ愛」についても書きたいんだけれど、前回はわたしの好きな"当事者じゃないからこそ笑える、悲しみと痛み"があって、上演中結構泣き笑いしたので今回も結構かまえていて、ちゃんとアイメイクをしないで劇場に入った。わたしあるあるです。あるよね?

 

一作目と同じく囲み~~~!変形舞台だいすき!ブラックボックスばんざい!とうきうき。いまいちハマれないときの挟み・囲み舞台は地獄だけど、それでもすきです。いろんな楽しみ方があるから!

 

お話は、ざっくり言うと死んでしまった人を取り囲む人々。ざっくりすぎるか。

妻を失った男が妻の実家に居候している。あれから2年、男は変わらずここにいる。けれど妻の妹は彼を見て思う。この男はちがう。妻の父は、彼の友人は。みたいな。あらすじが下手ですね。でもフライヤーのイメージで伝わると思う。前回と思ったけれど、フライヤーデザインがとてもすきです。

 

さて、感想を。

わたしは、悲しみは水ものだと思っています。だから誰かを失ったとき一番悲しいのは、その人のことを失った悲しみがどんどんどこかへいってしまうことなんですね。というか、人を失うってことって直接的な痛みすぎる。死に対する反射的な悲しみなのか、その人個人に向けた悲しみなのか、わからなくなる。わたしは1度も言葉を交わしたことのない人の死でも声をあげて泣くことのできるタイプの人間で、だからこそなのか、そう思ってしまう。

死んでしまった女の人。その父と、恋人。が主に描かれていて、恋人(旦那)は最低だと言われます。いろんな方向からね。けれどわたしは彼の気持ちが痛いほどわかるな、と思ってしまった。周りの人の気持ちもわかる。けれど彼のいうこともよくわかる。

印象に残ったシーンとして、彼が追い詰められて吐露するところがあって。

 

新山「本当に・・・本当には・・・一葉さんのこと好きじゃなかったかもしれません・・・」

寛治「?」

新山「スイマセン・・・」

寛治「何・・・?」

新山「わからないんで・・・そんなの・・・ホント言いきれないっていうか・・・何と比べてそうなのかも、ホンット、わからないんで・・・」

寛治「・・・」

新山「でも、アイツ・・・それでいいって言ってたんです・・・言ったんですよ。いいって・・・俺に。だから俺・・・一緒に・・・」

寛治「は?」

新山「だけどいきなりアイツ死んだから・・・死んだから・・・俺が、ひどい人間になって・・・どう見ても、俺が最低な人間になるじゃないですか・・・」

寛治「最低だろ・・・?実際に」

新山「でもアイツはホントにいいって言ったんですよ・・・?」

寛治「・・・何言ってんだお前?」

新山「本当に、本当に・・・俺は、駄目なんですか・・・?」

寛治「・・・?」

新山「本当に、本当に、俺が・・・駄目なんですか・・・?」

 

新山はこのあと、寛治(お父さん)に「忠男くんここにいたら喜ばれると思って、いるの?」「アイツのこと偲んでたら、俺たちが有難く思うから。ここにいるの?」と問われ、「本当に!アイツにとって俺は最低じゃなかったですよ・・・!」といい、「人が突然死ぬってことは・・・怖いことなんだって・・・今は、身に染みてます・・・」とこぼします。蓬莱さんの戯曲って本当に、秀逸だな…わたしならこんな会話、かけない…と戯曲を読み返して平伏した。

自分は人に比べて愛情が薄いなと思うことがあります。誰かの人生に責任を持つことは怖いなと思うことがたくさんある。彼は優柔不断で、なあなあで、都合がよくていろんなことを引き起こしもしたけれど、それってあるあるだとも思うのです。最低なこともしてるんだけどね。でも、作中でも言っていたけど、誰も死ぬなんて思わない。思わないよ。たとえば酷いこといって、でもまあお互いに悪くて、普通ならごめんねって仲直りできたはずなのに、死なれてしまったらこっちがなにもかも悪いみたいじゃない。死ってずるいよな、と思う。でも死を得たからこそ愛せたり愛しているつもりになれたりもするのかなと思う。

モダンスイマーズは圧倒的に戯曲がしっかりして最高で、そこに安定した俳優陣ととりわけきらりと光る俳優が一人いて、素敵だなあと思います。あと、スタッフワークが素敵!舞台美術の素晴らしさは見て貰えばわかると思うし、一番最後のシーンの照明が美しすぎて泣きそうになってしまったし、前回から思っていたけど飲み込むような音が最高でした。すきです。座り芝居が多いので正直客席がもっと観やすければ嬉しいのだけど、席数を考えると限界なのかな。当日券もバンバン出ているようなので指定席なのは有り難いなと思います。ちょっと好みがずれるなど思ったのは最後の演出くらいかな。わたしは、全面的に降らせるほうが(周囲全面的に)すきです。合間がみえてしまうとちょっと仕掛け失敗感があって…でもすごく美しいシーンでした。蓬莱さんは映像の脚本もかかれている方だけれど(とはいえ映像のほうはピンクとグレーしかみたことはないのですが)、演劇には演劇的なアプローチを持ってきてくれるのですごい作家さんだなと思います。三作目も観に行くつもりなのでたのしみ!