わたしのたべかた

とるにたらないこととくだらないこと。

もう一度やりたい表でできるサシ劇台本

※2020.03.28最終更新

 

最近りすぽんでサシ募集枠をよく開くので、自分用のメモ。

全部だいすきオススメ最高なので、ぜひ…

ひとまずは長さごとに。作者別記事も書きたいな。とりあえず公開して、随時加えます。

 

 

 

 

0:2

 

 ・貴方の神に祝福を!/10分

  作・N(aCl+1)さま

 

 ・テセウスのわたし/20分

  作・四ッ谷ちとせさま

 

 ・手に入れて、失った【事前or事後報告必須】/20分

  作・菅原悠人さま

 

 ・比翼の蝶/20分・連作

  作・伊月はるさま

 

 ・においたつ/20分

  作・揚巻さま

 

 ・Happy Birthday/20分

  作・つばささま

 

 ・私は死神になりたい【事前or事後報告必須】/20分

  作・菅原悠人さま 

 

 ・水面の花びら/20分

  作・伊月はるさま

 

 ・ミラージュ・アクト【上演登録必須】/30分

  作・ひよこ大福さま

 

 ・曽根崎心中/30分

  作・羽白深夜子さま

 

 ・先生、時間です!/30分

  作・揚巻さま

 

 ・一通夜曲/40分

  作・揚巻さま

 

 ・花魁道中いろは唄~八葉~/30~40分

  作・白鷹さま

 

 ・さよならはアダムの庭で【上演登録必須】/60分

  作・ひよこ大福さま

 

 ・そしてエヴァーは永遠に【上演登録必須】/60分

  作・ひよこ大福さま

 

 ・フィンランド【上演登録必須】/60~90分

  作・ひよこ大福さま 

 

 

1:1

 

 ・貴方の神に祝福を!(古賀♀三上♂版)/10分

 ・貴方の神に祝福を!(古賀♂三上♀版)/10分

  作・N(aCl+1)さま

 

 ・女しかいない星/10分

  作・うりぽんさま

 

 ・eclat de cocon/15分

  作・羽白深夜子さま

 

 ・煙草とバニラとコーヒーと/20分

  作・モモチヨロズ様

 

 ・eclat et rose/20分

  作・羽白深夜子さま

 

 ・錫色のベール/20分

  作・羽白深夜子さま

 

 ・バツが欲しくて/20分

  作・揚巻さま

  恋愛/アラフォー/バー/しっとり  

 

 ・エンゼルフィッシュ症候群/20分

  作・鏡アキラさま

 

 ・行灯夜行/20分

  作・ちをとさま

 

 ・午後8時のチョコレート/20分

  作・フジタハナさま

  叫びなし/恋愛/社会人/ほっこり

  普段は憎まれ口を叩くような仲の2人のかわいい恋の話。密やかな片思い。

 

 ・パスワード/20分

  作・フジタハナさま

  叫びなし/姉弟/ほっこり

  お父さんのネットバンクをこっそり開けようとする2人。

  はじめは軽めのタッチだけどじーんとする、家族の話。

 

 ・柿の落ち葉と同じ月/30分

  作・藤生ヨミさま

 

 ・紫煙の行方/20分

  作・揚巻さま

 

 ・幼馴染の会/20分

  作・大盛りさま

 

 ・椀種にはお豆腐を/20分

  作・穂春さま

 

 ・僕は幸せに恋をする/25分

  作・羽白深夜子さま

 

 ・ジェミニ/30分

  作・藤生ヨミさま

 

 ・4月1日~嘘つきからの手紙~/30分

  作・九条顕彰さま

 

 ・幽霊と記憶喪失【事前or事後報告必須】/30分

  作・菅原悠人さま

 

 ・一番嘘が上手いのは【事前or事後報告必須】/30分

  作・菅原悠人さま

 

 ・先生、時間です/30分

 ・先生、時間です(逆転版)/30分

  作・揚巻さま

 

 ・ふっかつのじゅもん/30分

  作・揚巻さま

 

 ・カミカゼ/30分

  作・白鷹さま

  叫びあり/戦争/時代物/切ない

 

 ・むかし、いま。/30分

  作・月舞海玖さま

  恋愛/切ない/夢

  写真家を目指す彼と、陶芸家を志す彼女。

  運命みたいに出会った二人の道が少しずつ分かれてしまう切ないお話。

 

 ・悪魔の花嫁~愛のカタチ~/30分

  作・ちをとさま 

 

 ・一通夜曲/40分

  作・揚巻さま

  友人/切ない/選択

 

 ・シェリー/40分

  作・ちをとさま

 

 ・シガレット・キス/40分

  作・偪山 漱流さま

 

 ・闇路穿つ/40分

  作・うり子さま

 

 ・お兄ちゃんとは暮らせない【事前or事後報告必須】/40分

  作・楽静さま

 

 ・友人/60分

  作・皐月翠さま

 

 

 1:0:1

  

 ・ISiS/Prologue/15分

  作・高田えぬひろさま

 

好きなサシ劇台本

質問箱に投げられた「好きなサシ劇台本はなんですか?」をみて、とてもじゃないけど文字数に収まらなさそうだったのでゆるりと書いてみようかなと。

一部、ブラウザで読めない台本もあるのですが、好きな作品としてどうしても並べたいものは気にせず名前を出しています。

説明下手なのですが愛だけはあるので許してくださいな。

(規約に記載のないサイトさんの台本は、一部台詞を引用していますがダメだったら教えてください…)

 

■不帰の初恋、海老名SA(作:坂元裕二

1:1/120分/朗読劇/手紙/すれ違い

カルテット、最高の離婚東京ラブストーリーなどテレビドラマの脚本家として有名な坂元裕二さんの朗読劇台本。「往復書簡 初恋と不倫」のうちの初恋のほうですね。かえらずのはつこい、と読みます。

初恋の人から不意に届いた手紙。時を同じくして目にしたニュースでは、彼女の婚約者が運転する高速バスが横転事故を起こし、運転手は逃走中だと報じている――。

忘れてしまうということ、手に入らなかった(手に入ったかもしれなかった)もののこと、言えなかったこと。そういうことがすごく丁寧に描かれている作品だなと感じます。好き。

玉埜くんが疑問に思うだろうことは十分承知しています。

そうですね、合理的に説明出来たらいいのにと思います。

冷蔵庫の機能を説明するみたいに、炊飯器の機能を説明するみたいに、

わたし自身の機能を説明出来たらいいのになと思います。

わたしには可愛い犬を見て、可愛いな~と思う機能があります。

花束なんかをもらって綺麗だな~と思う機能があります。

人を愛する機能はありません。これは抽象的な話じゃありません。

わたしは、他人の体を受け付けることが出来ません。

桂木さんの体を受け入れたことは一度もありませんでした。

手に触れたことさえありません。理由はわかりません。

たとえば子供の頃の傷みたいなものがあるとしても、

その自覚はないから、

わたしはもう、どうしてなんだろうと思うことをやめてしまいました。

炊飯器にだってタイマーのないものはある。それは元々そういうもの。

そんな風に思うことにしています。

なのにわたしは桂木さんとの結婚を望みました。許されないことでした。

おやすみなさい。  

 

きっと絶望って、ありえたかもしれない希望のことを言うのだと思います。

三崎さんの手を握ることは出来た。

だけど大切なことは、握ることじゃなく、放さずにいることだった。

三崎さんのことが好きでした。それじゃ。

1つめが三崎さんの、2つめが玉埜くんの1番すきな台詞。「絶望って、ありえたかもしれない希望」という表現に、坂元裕二さんの言葉の秀逸さが滲んでいるなあと思います。平伏した。

 

■錫色のベール(作:羽白深夜子)

https://www.salome-neige.com/

1:1/20分/兄妹/元同級生/結婚前夜

わたしが深夜子さんを知るきっかけになった、台本コンテストにも出されていた一作。やっぱりすごくすごく好きで、1本だけ選べといわれたらこの作品を挙げてしまう。紗弥の結婚式の前日のふたりの会話。深夜子さんの台本のすきだなあと思うところは、台詞の奥に感情が潜んでいるところ…!それが美しくて切なくてたまらなくって大好きなんですけど、この錫色のベールも最高なんですよね… 人の言葉はさ、そのままの意味を持たないことの方が多いから。キラキラした台詞が多いようにみえて、深夜子さんのすごさは、そこに奥行があるところなんだな。ここのシーンをやるとき、いつも泣きそうになる。

隼人:紗弥。
紗弥:なぁに?。
隼人:ピアスの意味、知ってる?
紗弥:……知ってるよ。 隼人って、気障だよね。
隼人:お前のは、旦那に買って貰えよ。
紗弥:……お休み。 明日は寝坊しないでね。
隼人:妹の結婚式に寝坊する程腑抜けじゃない。 お休み。

ああ……わたしは羽白深夜子先生台本の男が本当にすき…(愛が溢れすぎて死にました)

キザでなく、気障なのもいいよね。腑抜けじゃない。いいよね。ワードチョイスがすきだ。音として口にしても、聴いても心地よいのに、目でも楽しめる。これが深夜子さんの魅力。ひとりの作者さんにたいしてひとつにしようと決めたので錫色のベールをあげましたが、よく上演しているのをみる「僕は幸せに恋をする」は映画のような構成力の鬼だし、「eclat et rose」「eclat de cocon」 は童話のような世界観にうっとりする。アミューズメントチャイルドだけやったことがないので、わたしのショタに耐えうる精神をもった男性がいたらご一緒してください。

 

■マシーン阿良川(作:ススキドミノ)

http://doodletxt.web.fc2.com/

1:1/16分/会話劇/死/ほんのりとした悲しみ

元同級生の葬儀後に、久しぶりに会うふたりの会話。ドミノさんの作品は好きなものがたくさんあるんだけれど、断トツで好きなのがマシーン阿良川。人におすすめされてはじめてやってからずっと好き。お話もさることながら、自由度の高さもすきな理由のひとつです。相馬、篠、そして阿良川。主に3人の人物がでてくるんですが、3人がどういう関係性であったかの読み解きがかなり読み手に任されている、と思っています。もちろん指標になる言葉はたくさん落ちていて、でもそこからどう想像を膨らませるかがすごく楽しいし、相手の演者さんがどういう風に解釈してるのかなあ、と考えながら掛け合っていくのが楽しい。空気感のある台本なんですねえ…すきだなあ。「許されないのかな」について悶々と考えたいよね。やる相手によって悲しみの深さも意味もまるで違うものになるのがおっもしろい。最近覚えた楽しみ方は、「篠ちゃんには自殺した兄がいる(という勝手な設定)」でやってみる、です!楽しい!

 

■狂獣の檻(作:たかはら たいし)

http://doodletxt.web.fc2.com/

1:1/40分/会話劇/人殺し/恋人

なんてことない、同棲している恋人の会話。のようにみえて、彼女は人を殺すことが大好きな女の子。月に1週間だけやってくるあの瞬間だけ、どうしてもその衝動に耐えきれない。こうして書くと女の子のほうが難ありにみえるんですが、「僕は檻なんです」と語る君、そうそこの君のほうが実はずっと問題ありだとわたしは思うぞ。だいすき祐次くん。物語は二人の日常パートと、インタビューパートを交えながら進んでいきます。こういう、なにも動いていないまま終わる話がね、大好き。サシ台本として紹介していますが、インタビュアーを別の人にやってもらって1:1:1の形態でやることも珍しくない台本ですね。ここはお互い交互に読んだり、もう一人呼んで読んでもらったり、読まなかったり、表でやる時は実際に字幕として文字を流したり、人によって結構かわるのかなあ。狂獣の檻は四部作(といっていいよね?)で、無印・廻答・真廻・帰結があって、公開されているのは真廻をのぞく三作です。いずれもdoodle.txtに掲載されています。有難いことに一通りやったことはあるのですが、やっぱりわたしは無印がすき!でも、檻がすきだな~って人には一通りやってほしい欲もある…パラノーマンズブギーシリーズと一緒ですね、全部知った上で①をやると昂ぶるよね~~~っていう。個人的に、里菜が人を殺したことが(我慢できたと嘘をついていたことが)バレて、「もうやっちゃ駄目だよ」と祐次に言われ、しばらく沈黙が続いたあとの「こないだのアイスさ、食べない?」の祐次が最高にすきです。ここに、わたしが檻をすきな理由が詰め込まれている。

 

Apollo(作:紫檀

http://doodletxt.web.fc2.com/

 1:1/40分/SF/人工知能/近未来

近未来というワードであっているのか…?知識がないので許してください。土下座しますので。みんな大好きApollo…SF、全っ然詳しくないんですけどめちゃめちゃ好きなんです。意味わかんないでしょ?でも好きなものは好き。人工知能?すき!!!!という、好きなワードが詰まったApollo。アポロと呼ばれる人工知能と、「測定」を繰り返す少女のお話。紫檀さんの台本はいつも映像が見えるなと思うんですけど、Apolloは特にそう思う。ト書きが美しくって、台本としても好きだけどよみものとしても読んでしまう。これ男性、すっごく難しいんだろうな、わたしだったらできないな…とやる度に男性演者に心のなかで拍手するんですけど、シオンもね難しい!全然台本を読んだときにみえたシオンができない!でもはっきり理想があって、どうしてもたどりつきたくて、やる度に「劇レベルをあげたらまたやろう…」と遺言を残し、一度灰になります。すっごくやりがいのある台本。お話としてすごく綺麗でエモくて好きで、Apolloをやった影響で「インターステラ―」というどっしりSF映画に手を出しました。面白かった…映画みたあとにまだできてないのでやりたいです。もっともエモい指数が(わたし的に)高いのは、ビデオレターのシーンです。ここのシーンをもとに、誰とやりたいな…と考えることが多い。1回人のApolloを聞きたいんですけど、自分が1回(自分のシオンに)満足しないと絶対影響されるから聴けなくて、でもみんながどんな風にやるのか知りたい~~~と駄々をこね続けています。自分が演じる上では苦手なタイプの役なんですけど、台本がすきすぎてつい入れてしまった台本No.001…

 

サンクチュアリ・サラダ(作:後藤雄一)

http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Kouen/4257/scen/scen5.html

 1:1/60分/会話劇/絵描き/死んだ恋人

死ぬほど大好き後藤雄一さん。基本的に台本や戯曲は、ストーリー性より会話文や台詞に注視して読むんですが、台詞のセンスが最高にツボ。サンクチュアリ・サラダは、大学時代の元同級生のふたりが再会して、男は彼女とうまくいってなくて、みたいな。しばらく女の家に寝泊まりするみたいな。オーディナリー・デイズの男女逆みたいな設定なんですけど、サラダのほうがじっとり汗ばむ感じがする。汗って、風が通るとゾクッとするほど冷たいしね。佐和子は絵を描くことを仕事にしていて、彼らの共通の友人であり彼女の恋人だった真一くんは映画を撮る人だった。女は才能に惹かれるよねとよく大学の同期と話すんですけど、真一のことを話す佐和子がすごく好きです。真一は天才じゃないよ。それは「深く知っている」からこそでる言葉だなあと思う。仕事をしている佐和子と、なんとなく暇な正樹がしりとりをするシーンとか、そういう何気ないシーンがすごく好きで。直接的ではない台詞がとても多いので、佐和子をどういう風につくるか、いつも遊べてすきです。

佐和子「奥村君てさぁ・・・。」
正樹 「ん?」
佐和子「目のあたりとか結構、真一と似てるね。」
正樹 「そっかぁ?」
佐和子「なんとなくだけど。」
正樹 「真一の服着てるから、そう見えるんじゃねぇの?」
佐和子「・・・かもしんない。」

 

正樹 「何にも知らなかったんだなって思ってさ。」
佐和子「裕美ちゃんが?」
正樹 「いや、俺が。」
佐和子「奥村君が?」
正樹 「望月と真一の事とかさ、あいつのこととか・・・。」
佐和子「・・・そう。」
正樹 「俺さ・・・。」
佐和子「ん?」
正樹 「あいつのあんな弱々しい声も、初めて聞いたよ。」

個人的に辛いシーン。佐和子をどうつくるかにもよるんですが(何度でもいう)。佐和子をどうつくるかは、はじめる前にぼんやり考えることももちろん多いけど、正樹がどうでるかにも左右されるんですよね。書いてるとやりたくなっちゃうな。客観的にみると結構どうしようもない二人なんですけど、人間なんてどうしようもないものですからね、大好き。

モダンスイマーズ「悲しみよ、消えないでくれ」

今年に入ってまた定期的にインプットするようになったからブログにでも書き溜めよう~と開いたら、ずいぶん前に書いたピンクとグレーの感想がでてきた。このタイミングで。おもしろいからそのまま残しておこう。

ということで、観たもの読んだもの触れたものについて好き勝手に書き散らかしていく。手始めに最近みた掲題の舞台から。

 

f:id:ma712311231:20190327144056j:plainf:id:ma712311231:20190327144112j:plain

 

 

 

句読点三部作と位置づけられた3作品を連続上演中のモダンスイマーズ。

一作目の「嗚呼いま、だからこそ愛」がはじめて観たモダンスイマーズで、グッときてしまったので慌てて戯曲を買って、今回2回目。

別で「嗚呼いま、だからこそ愛」についても書きたいんだけれど、前回はわたしの好きな"当事者じゃないからこそ笑える、悲しみと痛み"があって、上演中結構泣き笑いしたので今回も結構かまえていて、ちゃんとアイメイクをしないで劇場に入った。わたしあるあるです。あるよね?

 

一作目と同じく囲み~~~!変形舞台だいすき!ブラックボックスばんざい!とうきうき。いまいちハマれないときの挟み・囲み舞台は地獄だけど、それでもすきです。いろんな楽しみ方があるから!

 

お話は、ざっくり言うと死んでしまった人を取り囲む人々。ざっくりすぎるか。

妻を失った男が妻の実家に居候している。あれから2年、男は変わらずここにいる。けれど妻の妹は彼を見て思う。この男はちがう。妻の父は、彼の友人は。みたいな。あらすじが下手ですね。でもフライヤーのイメージで伝わると思う。前回と思ったけれど、フライヤーデザインがとてもすきです。

 

さて、感想を。

わたしは、悲しみは水ものだと思っています。だから誰かを失ったとき一番悲しいのは、その人のことを失った悲しみがどんどんどこかへいってしまうことなんですね。というか、人を失うってことって直接的な痛みすぎる。死に対する反射的な悲しみなのか、その人個人に向けた悲しみなのか、わからなくなる。わたしは1度も言葉を交わしたことのない人の死でも声をあげて泣くことのできるタイプの人間で、だからこそなのか、そう思ってしまう。

死んでしまった女の人。その父と、恋人。が主に描かれていて、恋人(旦那)は最低だと言われます。いろんな方向からね。けれどわたしは彼の気持ちが痛いほどわかるな、と思ってしまった。周りの人の気持ちもわかる。けれど彼のいうこともよくわかる。

印象に残ったシーンとして、彼が追い詰められて吐露するところがあって。

 

新山「本当に・・・本当には・・・一葉さんのこと好きじゃなかったかもしれません・・・」

寛治「?」

新山「スイマセン・・・」

寛治「何・・・?」

新山「わからないんで・・・そんなの・・・ホント言いきれないっていうか・・・何と比べてそうなのかも、ホンット、わからないんで・・・」

寛治「・・・」

新山「でも、アイツ・・・それでいいって言ってたんです・・・言ったんですよ。いいって・・・俺に。だから俺・・・一緒に・・・」

寛治「は?」

新山「だけどいきなりアイツ死んだから・・・死んだから・・・俺が、ひどい人間になって・・・どう見ても、俺が最低な人間になるじゃないですか・・・」

寛治「最低だろ・・・?実際に」

新山「でもアイツはホントにいいって言ったんですよ・・・?」

寛治「・・・何言ってんだお前?」

新山「本当に、本当に・・・俺は、駄目なんですか・・・?」

寛治「・・・?」

新山「本当に、本当に、俺が・・・駄目なんですか・・・?」

 

新山はこのあと、寛治(お父さん)に「忠男くんここにいたら喜ばれると思って、いるの?」「アイツのこと偲んでたら、俺たちが有難く思うから。ここにいるの?」と問われ、「本当に!アイツにとって俺は最低じゃなかったですよ・・・!」といい、「人が突然死ぬってことは・・・怖いことなんだって・・・今は、身に染みてます・・・」とこぼします。蓬莱さんの戯曲って本当に、秀逸だな…わたしならこんな会話、かけない…と戯曲を読み返して平伏した。

自分は人に比べて愛情が薄いなと思うことがあります。誰かの人生に責任を持つことは怖いなと思うことがたくさんある。彼は優柔不断で、なあなあで、都合がよくていろんなことを引き起こしもしたけれど、それってあるあるだとも思うのです。最低なこともしてるんだけどね。でも、作中でも言っていたけど、誰も死ぬなんて思わない。思わないよ。たとえば酷いこといって、でもまあお互いに悪くて、普通ならごめんねって仲直りできたはずなのに、死なれてしまったらこっちがなにもかも悪いみたいじゃない。死ってずるいよな、と思う。でも死を得たからこそ愛せたり愛しているつもりになれたりもするのかなと思う。

モダンスイマーズは圧倒的に戯曲がしっかりして最高で、そこに安定した俳優陣ととりわけきらりと光る俳優が一人いて、素敵だなあと思います。あと、スタッフワークが素敵!舞台美術の素晴らしさは見て貰えばわかると思うし、一番最後のシーンの照明が美しすぎて泣きそうになってしまったし、前回から思っていたけど飲み込むような音が最高でした。すきです。座り芝居が多いので正直客席がもっと観やすければ嬉しいのだけど、席数を考えると限界なのかな。当日券もバンバン出ているようなので指定席なのは有り難いなと思います。ちょっと好みがずれるなど思ったのは最後の演出くらいかな。わたしは、全面的に降らせるほうが(周囲全面的に)すきです。合間がみえてしまうとちょっと仕掛け失敗感があって…でもすごく美しいシーンでした。蓬莱さんは映像の脚本もかかれている方だけれど(とはいえ映像のほうはピンクとグレーしかみたことはないのですが)、演劇には演劇的なアプローチを持ってきてくれるのですごい作家さんだなと思います。三作目も観に行くつもりなのでたのしみ!

 

小説「ピンクとグレー」を読んで

いいものをいいと見極められるようになるために、自分のなかの衝動をうまく言葉にできるようになるために、見たもの・触れたもの・感じたものを記していこうと思う。

 

「ピンクとグレー」を読んだのは半月ほど前。

この本を購入した人の八割と同じように、わたしも著者の加藤シゲアキくんに興味をもって手に取った。そもそもNEWSのことを詳しく(といってもメンバーの名前とか、ここ数年の間に彼らになにがあったとかそういうレベルだけれど)知ったのも同じくらい最近のことで、ただ彼が不意に見せる仄暗い顔や真っ直ぐだけれど無表情な目になぜか心底惹かれてしまった。はじめての作家さんの本を購入するときは大抵そうするように短編集を買おうと思っていたけれど文庫化されていないとのことだったので処女作を。

 

突然だけれど、わたしは自分の主観に素直だ。どれだけ見た目が好きでも、人間性が好きでも、芝居が下手ならその俳優が出演しているドラマや映画に興味は持てない。自分が演劇に携わっていた期間があるのも大きいのかもしれないけれど、映画もドラマもアニメも、役者や演出が肌に合わないと観ることができない。だから、「ピンクとグレー」を読んでガッカリしてしまったら嫌だなあと不安があった。それが芝居や歌なら、別に下手でもいい。でも小説を書くことは彼の中で割と大きな部分を占めていると感じたから、それが微妙だったらやっぱり素直に彼の言葉を尊敬のフィルターを通しては聞けないなと。

 

そうして読んだ「ピンクとグレー」。前半は、肌に合わないタイプの文章だなあという印象。"処女作"感が前面に出ていて、本人の葛藤や懸命さがこちらにも伝わってきた。わたしは加藤シゲアキをコンプレックスの人だと思っているから、どうしても本人が重なって見えるなあ、くらいの感触で、りばちゃんの劣等感に共感するなあ、くらいの感じだった。ごっちのお姉ちゃんがコンテンポラリーダンスをやっていたとか、懐かしの地・淵野辺の描写とかにあ~ってなったりとか。

でも、後半はあっという間だった。彼の言葉に慣れてきたのか、彼が言葉に慣れてきたのかはわからないけれど――「あのときサリーがさ、ラブホテルのライターに見えたんだよ」の一言がひどく印象的で、すとんと心に落ちた。そこからぐっと読み進めやすくなった。わたしはどうしてもりばちゃんに心情を重ねてしまっていて、ごっちってわかんないなって、なんだよって気持ちが重たくてたまらなかったけど、不意にごっちがまた手元に戻って来て泣きそうになった。自分の劣等感と嫉妬の醜さは変わらず重たいのに。同時に、一瞬だけごっちがきちんと温度のある人間に見えた気もした。そこからのごっちの美しさ。同じ不器用にしても、ごっちの不器用さは美しい。浪漫があるし、でもやっぱりどこか冷たい。常に虚無を抱えていて、痛覚がなさそうな危うさがある。

総じていうと、想像していたよりもよかった。拙さは感じてしまうけれど、加藤シゲアキらしいし、この小説を書くことは彼にとって大きな挑戦だったということを改めて実感した。

出てくる単語にどうしても本人の匂いを感じるのでどうしても本人のことを考えてしまうのだけど、彼は結構ロマンチストなんだなあとちょっとクスッとした。物語性が強くてあまり現実的ではないけれど、その青さがハマっていた。ごっちの抱える問題や寂しさは今のわたしに直結していて、小さくため息をついてしまいたくなるところもいくつかあった。作品の完成度としては手放しで賞賛できる!と太鼓判を押せるほどではないけれど、青春小説らしく真っ直ぐにこちらの心を抉ってくる感じが好きだなと思った作品でした。